今回から、アメリカ南部が世界に誇る優れた企業を紹介してみたい。第一弾は日本の皆様も名前は聞いたことがあるであろうAT&T Inc(以下AT&T)だ。
AT&Tはアメリカ大手通信キャリアで、固定電話、携帯電話、インターネット接続サービスなど幅広いサービスを展開している。日本で言えばNTTの様な存在で、携帯電話でも最大規模の4Gネットワークを誇り、競合のベライゾン、スプリント、Tモバイル等と比べて、テキサス州で最もつながり易い印象を受ける。
また、固定通信事業でも成功しており、我が家でも同社のIPテレビ事業であるU-verseを契約していた。U-verseは日本と比べると非常に多チャンネルで、ニュース、スポーツ、音楽、ドラマ、海外チャンネルなど何百種類というチャンネルが視聴できる。(と言っても、次第に視聴するチャンネルは限られてくるが。)2015年には衛星放送大手であるディレクTVを買収し、更に事業領域を広げている。
2016年10月にはアメリカの大手メディアのタイム・ワーナーを850億ドルで買収することを発表したが、メディアと通信キャリアを併せ持つ超巨大企業の誕生により、価格の値上げ等で消費者が犠牲になるとの懸念は強く、未だ当局の承認は下りていない。
AT&Tという名称の由来はThe American Telephone & Telegraph Companyの頭文字から来ており、AT&T Incとしての設立年こそ1983年であるものの、会社の歴史は電話という技術自体を発明したグラハム・ベルが1877年に設立したベル電話会社にまで遡る。2008年以降、本社はテキサス州の大都市の一つであるダラスに位置する。
AT&T(ティッカーコードはT)は米国株投資の世界では、長期連続増配銘柄として有名で、連続増配期間は驚異的な33年間にまで達する(つまり設立及び上場以来、一貫して増配を続けているということだ)。株価はタイム・ワーナー買収の期待もあってこの数か月上昇を続けており、2016年12月29日現在の株価は42.5ドル。それでも、配当利回りは4.5%もあり、日本の大企業ではほとんど見ることができない数値だ。ROEも10.9%となっている。
それではAT&Tは地元ダラスにどういった貢献をしているのだろうか。同社のウェブサイトに2016年10月9日付で発表されたAT&T and City of Dallas Plan Downtown Destination for Eating, Shopping and Playing(AT&Tとダラス市は食事したり、買い物したり、遊んだりできるダウンタウンのスポットを計画中)という記事で、これまでの貢献と今後の計画について述べている。
同記事によると、2008年にグローバル本社をダラスに移して以来、ダラスのダウンタウンでの雇用は移転前の倍の約5,700人に達し、本社の改築のために1億㌦以上の投資を実施したという。そして、2016年にはAT&Tがダラスのダウンタウンから移転するという噂があったが、今回の発表によると、AT&Tはダラスのタウンタウンに留まり、それどころか更に多くの資金を投じ、ダラス市と共同で、AT&T Discovery Districtという一般開放された商業スペースを整備することを計画しているという。
積極的なM&Aを続けるとともに、地元ダラスへの貢献も忘れない巨大企業AT&Tの今後に注目したい。